父というひと





典型的な大学デビューだった私に






父は甘く、というか


優しくなった








高校のはじめてのバイト代は

親に北海道旅行を

プレゼントするといったときの


二人の顔




そんなに高いのは

プレゼントできないんだけど…





もちろん払わしてくれなかったんだけど

親が二人で旅行にいったのは


私がしる限り

それが初めてで


それは嬉しそうだった






親友もよく家にきて





おっちゃーーーーん


ケーキこうてきたでー



たべよー





といって



そのとき祖父はずっと入退院してて


はじめて家族が穏やかな時間が

過ごせるようになった





絵でたべたい

デザインの学校にいきたい



というと




高校だけは商業科にいってくれ


あとは好きにしていいから





いうことをきいて







鍼灸の大学にいきたい





といったとき



受かると思ってなかったらしい







一人ですべて手続きし

合格通知をみたとき



 


目を向いてた






私学の医療




学費が高い






無利子の奨学金をとれて


なんとかいかせてもらった






その頃から

周りによく私の自慢をしていたらしい






娘が鍼灸師になる




まだなってない






どんどん親バカになり







20歳の成人式

わたしは敢えてスーツでいった




振り袖のなかのスーツは目立つ


みんな夜中から着付けしてぐったり

そんなのやだ








背伸びして買った

UNTITLEDのグレーのスーツ


髪はあえてロングのストレート


メイクはナチュラル






思った通り会場では

かなり目立って


友達も一緒に送り迎えした父は

それをみていて



うちのこが一番綺麗や



みんなの前でいった





お父さんっ




ほんまのこというて何が悪い




真顔でそういった









父の親バカは拍車がかかる








女優の小雪さんが好きで




ラストサムライとかみて

いうんです








これお前に似てるよな




お父さん大丈夫?






色白と黒髪以外

なにひとつあってないから









国家試験なんか落ちるわけがない

試験終わってわかってた



でも親は心配してたのか




合格通知は実家に届き

クリニックではたらいてたら


電話がかかってきて



何かあったのかと

すぐかけ直すと







おめでとう!!



こっちでお祝いしてるからな!!




後ろでどんちゃん騒ぎしてるのが

きこえるんですけど








働いてるんですけどね




それはそれは喜んでくれて







北新地時代

親とお昼お寿司屋さんに誘って


弟と二人でごちそうした




はじめて




お父さんは終始ご機嫌だったけど

私たちがはらったとき


1万5000円くらいだったかな






顔を真っ赤にしてて





お父さんお腹いっぱい?


ってきいたら





胸がいっぱいや





そういってくれて






このあと亡くなって

最初で最後になってしまった









父が亡くなって

先輩の施術を受けていた時



父も先輩にみてもらってたので

その話してくれた








僕が


後継ぎをつくらないんですか?


ときいたら



この仕事は先が明るいとは

言えないからね



でもあえていうなら

娘かな



あの子は人と違う感性がある



小さな頃木に抱きついて


あったかいっていったり




なんで

人と同じことしないといけない?



といったり



人と違うことをしようとする




でもこの仕事は

重労働であの子は体が弱い




だから


進みたい道があるなら

それでいいかなと


僕は思ってるんです





とても、ほめてらしてましたよ





 



涙が止まらなかった








なぜいわなかった


なんとでもしたのに





何故わたしにいわなかった



他の人に自慢するくらいなら



わたしは一度も聞いたことがない





もう、聞くことができない





ばかだ お父さんは






ただ黙って泣く私に

先輩は黙って針をうってくれた






つまり何が言いたいかというと









わたしは愛されていたんですよ






今はよく、わかります







そして



愛してるなら


誇りに思ってるなら





言わないと伝わらない







本人から聞きたかったですね




はい