蝶よ 花よ
と、いう言葉があるが
お母さんはそういうふうに育てられた
贅沢な家ではなかったが
なにかしなさい
いわれたことがなかった
ピアノを弾いて
たくさんのシャム猫とくらし
おばあちゃんの膝にいた
気難しいロペさん
炊飯器のつかいかたはわからない
結婚して
初めてつくった目玉焼きは
炭となり
父は投げたとか
そんな母が
うちの家での生活は辛く、
壊れていくのは自然なことで
私が身体がよわいから
いろんなものにつれていかれて
そのときは導引術をおしえてもらいに
大阪へ二人でいくことになった
忘れもしない
ナイショよ
ハーゲンダッツの
アイスクリームをかってくれた
しかもダブル
トッピングもいる?
いいの?
生まれてはじめてみた
可愛くてつめたいアイスクリーム
それも一人でたべていい
わたしは電車で
大事に大事にたべた
ずっとありがとうっていった
お母さんありがとう
おいしかった
それは何回も
帰りの電車でいわれた
ぽつり、と
お母さんはいつもかってもらってたの
あんたらに
かってあげれなくてごめんね
3人分はかえないの
これ以上
ありがとうっていってはいけないと
黙った瞬間だった
だから
アイスクリームは
ハーゲンダッツなのだ
わたしは小さな頃から視力がさがって
メガネをかけなければならなくて、
おじいちゃんが
お母さんにこういった
子供の 目をつぶしやがって
お母さん泣いてた
メガネかけてることが
悪いことのように感じて
大学の眼科の授業でしる
目は遺伝
本人の意思や努力は関係ない
だからお母さんにいった
おじいちゃんはああいったけど
お母さんは何も悪くなかったんだよ
お母さんは泣いてた