事実をいえる医者











診察室の隣のベッドで横になって


母だけが診察室に残された












なんでそんなこと

言われなきゃいけないんですか!










母の叫び声が聞こえた










先生はこういった












娘さんがああいう風になったのは

お母さんあなたのせいでもありますよ











病院かえよ!

あんなところあかん!










弱々しく 答えた








わたしはここがいいの












母はなにもいわなかった









病院にこなくなった


 





あるとき先生にきかれた








君は小さな頃

誰に甘えていたんだい?











いません












いない?


一人も?




抱きしめられた記憶は?












一度もありません


許されなかったので













遊んではいけません



絵をかいてはいけません


友達から借りたマンガは燃やされる



おもちゃも
お前は女やからあかん




おやつもたべたいだけたべれない


苦い薬だけいっぱいで








ガマンの家








唯一母方のおばあちゃんが

ワタシを守ってくれました








おかあさんがいいました


わたしが小さな頃







この子いらないって












おばあちゃんは



女の子は役に立つんやで




っていってくれた










エビフライ3食たべさせてくれた

はじめておもちゃかってくれた


お風呂屋さんの帰り
漫画借りてくれた


ジュースのましてくれた








ある時いわれた








あんたは天神さんの子なんやで













誰それ









神様、よ






でも死んじゃった


わたし小学生の時












お葬式つれていってくれなかった









ずっとないてた













それから

ずっとひとりです











…人間ていうのはね








小さなころは

無条件に甘えなければならない

ワガママいって親を困らせて





そうやって育つんだ









体と一緒でね

心も一歳ずつ重ねるんだよ






君は小さな頃から
泣いてるお母さんをみて

守ってあげなきゃって



一気に心が大人になってしまったんだ



その途中がないんだよ








だから君は

甘えたり
優しくされなければならないんだよ












どうやって













そんなこと知らない







よくもっと甘えたらいいのに






そういわれても

甘えちゃいけなかったから






やりかたしらない







だれに?





だれにそれをすればいいの?










ごはんのとき


祖父が許可したときだけ
はなしていい





それ以外は無言






おかげで所作で叱られたことはない






女が全てやれ








いわれた



今時の子なのに古風だね














わからない…




うつむく私に先生はいった










森田療法というものを知ってるかい?










不安と共に生きる




そういうものらしい










この時から

私は心、についてしらべだすことになる











心って…なに?








知りたかった